夫婦で話し合って、離婚することは決まった。でも「何を、どこまで書面にすればいいのか」が分からない。この記事では、書面に残す5つの項目と、養育費を公正証書にする理由をお伝えします。
登場するのは架空の夫婦です。実際の相談をもとにしたものではありません。争いのある離婚は弁護士の領域です。この記事は、話し合いで決められる夫婦に向けて書いています。
「口約束で大丈夫やと思ってた」友人の話
彦根市に住むゆかりさん(40代)は、夫の翔太さんと、話し合いのすえ離婚を決めました。小学生の息子が1人います。ゆかりさんが親権者になり、翔太さんが養育費を払う。そこまでは決まりました。
「あとは離婚届を出すだけやね」と言ったゆかりさんに、数年前に離婚した友人の美咲さんが言いました。
「ちょっと待って。うち、口約束にしたんよ。最初の1年は振り込まれてたけど、そのあと止まった。連絡しても『今は余裕がない』って」
美咲さんは、養育費の額も期日も、紙に残していませんでした。今から取り決めようにも、元夫とは連絡がつきにくくなっています。
書面に残すのは、この5つ
ゆかりさんは、翔太さんともう一度、席につきました。書面に残す項目は、大きく5つです。
- 親権:2026年4月から、話し合いで父母双方を親権者にするか、一方にするかを決められるようになりました。合意できないときは家庭裁判所が決めます
- 養育費:月いくら、いつまで(たとえば子どもが何歳になるまで)、どの口座に、毎月何日に
- 親子交流(面会交流):離れて暮らす親と子どもが、どのくらいの頻度で、どのように会うか
- 財産分与:結婚してから2人で築いた財産(預金・家・車・保険など)をどう分けるか。原則は2分の1ずつ
- 年金分割:結婚していた期間の厚生年金の記録を分けるか、どの割合で分けるか
慰謝料がある場合は、6つ目として金額と支払い方法を書きます。
養育費は「取り決めなくても2万円」。それでも書面にする理由
2026年4月から、養育費を取り決めていなくても、子ども1人あたり月額2万円を請求できる仕組み(法定養育費)ができました。ただし、使えるのは2026年4月1日以降に離婚した場合です。改正前に離婚した美咲さんには、この仕組みはありません。
また、この2万円は「決めていなかったとき」の暫定的な額です。実際に必要な生活費・学費は、家庭ごとに違います。取り決めがあれば、その額を請求できます。ですから、書面に残す意味は今も変わりません。法務省の解説(PDF)
離婚協議書と公正証書、何が違う?
ゆかりさんが迷ったのは、ここでした。「離婚協議書」と「公正証書」、どちらにすればいいのか。
| 離婚協議書 | 公正証書 | |
|---|---|---|
| 作る場所 | 自分たちで(専門家が文案を整えることもある) | 公証役場で、公証人が作る |
| 証拠としての力 | 合意の内容を証明できる | 公文書として高い証明力がある |
| 支払いが止まったとき | 裁判などの手続きが必要 | 「支払わないときは強制執行を受けてもよい」と書いてあれば、裁判をせずに給料などを差し押さえられる |
| 向いている場合 | お金のやりとりが無い、または一括で済む | 養育費など、長く続く支払いがある |
養育費は、10年以上続くことがめずらしくありません。その間に、相手の気持ちも生活も変わります。だからこそ、養育費がある離婚では、公正証書にしておくと安心です。日本公証人連合会の説明
期限があるものを、先に押さえる
話し合いに時間をかけすぎると、間に合わなくなるものがあります。
- 財産分与:離婚後5年まで請求できます(2026年4月から。それまでは2年でした)
- 年金分割:離婚から5年以内に請求します(2026年4月1日以降に離婚した場合。それより前の離婚は2年以内)。日本年金機構の案内
離婚届を出す前に決めておくのが一番ですが、先に届を出す事情があるときは、この期限を頭に置いておいてください。
家に住宅ローンが残っているとき
「家は私と息子が住み続ける。ローンは翔太さんが払い続ける」。ゆかりさんの家は、この形にしたいと考えました。
ここで一つ注意があります。ローンが残っている家は、銀行の承諾なしに名義を変えると、残りを一括で返すよう求められることがあります。家を分与するときは、名義をいつ変えるか、ローンをどうするかを、銀行に確かめてから書面にします。
行政書士にできること、できないこと
ゆかりさんと翔太さんのように、内容が合意できている夫婦なら、行政書士がその合意を離婚協議書や公正証書の文案にまとめられます。公証役場とのやりとりもお手伝いします。
一方、相手が話し合いに応じない、条件で争っている、調停や裁判になりそう。そうした場合は弁護士の領域です。当事務所では、状況をうかがったうえで、弁護士へのご相談をおすすめすることがあります。
その後:ゆかりさんの場合
ゆかりさんと翔太さんは、3回の話し合いで5つの項目を決め、公証役場で公正証書を作りました。「紙にすると、お互い冷静になれた」とゆかりさんは言います。
美咲さんも、あらためて元夫と連絡を取り、養育費の取り決めを進めることにしました。離婚したあとでも、養育費は取り決められます。ただ、連絡がつきにくい相手との話し合いには、時間がかかります。
迷ったら、まずご相談を
この夫婦の話は架空のものです。ただ、行政書士としてお話をうかがう中で、離婚を経験した方からこんな声を聞いたことがあります。
「何を決めておけばよかったのか、自分で考えていなかった」
「あとになって、書面を作っておくべきだったと気づいた」
話し合いで決まったときは、ほっとして、そこで終わりにしてしまいがちです。けれども困るのは、何年かたって約束が守られなくなったときです。
社会福祉士・FP・行政書士成宮事務所は、滋賀県彦根市の行政書士事務所です。離婚協議書・公正証書の文案づくりだけでなく、離婚後の家計の見通しも一緒に整理します。
初回相談は無料で、時間の制限はありません。相談だけで終わってもかまいません。離婚協議書・公正証書づくりの流れと費用は「離婚協議書・公正証書の作成」のページで紹介しています。
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