※この記事に登場するのは架空の夫婦で、実際の相談をもとにしたものではありません。
夫婦でも、相手名義の預金や契約は、原則として代わりに動かせません。元気なうちに契約で備えておけば、残された配偶者の負担を軽くできます。この記事では、彦根で暮らす架空の夫婦の物語で、その理由と備え方を見ていきます。
夫婦ふたり暮らし、どんな毎日?
彦根市の住宅街に暮らす、山本正雄さんと恵子さん。ふたりとも70代で、子どもはいません。朝はお堀端を散歩し、週末は湖岸まで車で出かけるのが楽しみです。
「わしに何かあったら、全部あんたに任せることになるなあ」
「そんなん、お互いさまやん」
そう笑いながらも、ふたりとも少し気になっていました。
夫が入院したら、妻は夫の口座からお金を下ろせる?
ある冬の朝、正雄さんが玄関先で転び、足の骨を折って入院しました。頭ははっきりしていますが、しばらく起き上がれません。恵子さんは入院費を払おうと、正雄さん名義の口座がある銀行へ向かいました。
「奥さまでも、ご本人の意思確認が必要なんです」
窓口でそう言われ、恵子さんは困ってしまいました。
預金の引出しには、原則として預金者本人の意思確認が必要です。全国銀行協会は、本人の生活費や入院費で困ったときは、まず取引銀行に相談を、と案内しています。
この場面に合う備えは財産管理委任契約です。判断能力があるうちから使え、結んだ時点で効力が生じます。預貯金の出し入れや、公共料金・施設利用料の支払いなどを、決めた範囲で任せられます。
認知症になったら、夫婦の財産管理はどうなる?
数年後。今度は正雄さんに、物忘れが目立つようになりました。
「それ、さっきも聞いたで」
「そうやったかなあ」
恵子さんは笑って返しますが、通帳の場所やお薬の管理が、少しずつ心配になってきました。
判断能力が下がると、本人の意思確認そのものが難しくなります。正雄さん名義の預金や契約は、恵子さんにはいっそう動かしにくくなります。この場面に合う備えは任意後見契約です。
任意後見契約は、判断能力があるうちに、公正証書で結んでおく契約です。家庭裁判所が任意後見監督人を選んだ時から、効力が生じます。任意後見人になる人は、本人の判断能力が下がったら、速やかにその申立てをすることが求められます(法務省)。
任意後見人は、配偶者などの親族のほか、専門家に頼むこともできます。「うち一人で全部は、しんどいわ」というときは、専門家に加わってもらう形も考えられます。
配偶者が亡くなった後、残された一人は何をすることになる?
さらに時が流れ、正雄さんが先に旅立ちました。恵子さんのもとには、やることが次々と押し寄せます。
- 葬儀と納骨
- 役所への届出
- 病院や施設の精算
- 電話や新聞などの解約
- 遺品の整理
「お寺さんの連絡先、どこやったかな」
恵子さんは、ひとつずつ探しながら進めるしかありませんでした。そして恵子さん自身に何かあったとき、同じことを引き受ける人はいません。
この場面に合う備えは死後事務委任契約と遺言です。死後事務委任契約は、亡くなった後の事務をあらかじめ託しておく契約です。財産を誰に渡すかは、遺言で定めます。子どもがいない夫婦と遺言については「子どもがいない夫婦に遺言書が必要な理由」で詳しく書いています。
備えは、いつから始めればいい?
答えは「ふたりとも元気なうち」です。3つの契約の入口になるのが、見守り契約です。定期的な電話や訪問で様子を確かめ、支援が必要になった時期を見逃さずに、財産管理委任や任意後見へつなぎます。
場面ごとにまとめると、次のとおりです。
| 場面 | 止まること | 合う備え |
|---|---|---|
| 入院(頭ははっきり) | 相手名義の預金の出し入れ、支払い | 財産管理委任契約 |
| 認知症(判断能力が下がる) | 本人の意思確認が要る手続き | 任意後見契約 |
| どちらかが亡くなった後 | 葬儀・届出・精算・解約などの事務 | 死後事務委任契約+遺言 |
| その入口 | 変化に気づく人がいない | 見守り契約 |
ふたりで同じ備えを、お互いのために
山本さん夫婦に備えがあったら。恵子さんは銀行の窓口で困らず、最後に残る一人のことも先に決めておけたかもしれません。
どちらが先に倒れるかは、誰にも分かりません。だから、夫婦で同じ備えを、お互いのために用意しておく。それが「申し訳ない」を「ありがとう」に変える近道です。
社会福祉士・FP・行政書士成宮事務所は、滋賀県彦根市の行政書士事務所です。どの契約から始めるかは「老後の備え」のページにまとめています。
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※この記事に登場するのは架空の夫婦で、実際の相談をもとにしたものではありません。


