親からお金を借りる。あるいは、子に貸す。結論から言うと、親子でも借用書は作ったほうがよいです。理由は3つ。贈与と見られないため、返す約束を忘れないため、そして、あとで相続のときにきょうだいともめないためです。
この記事の家族は架空です。実際の相談をもとにしたものではありません。
「300万、貸したるわ。いつでもええで」
彦根市に住む和子さん(70代)には、子どもが2人います。長女の由美さんは市内で家を買うことになり、頭金が少し足りません。
「お母さん、300万円だけ貸してくれへん?」
「ええよ。返すのはいつでもええで」
やさしい母です。由美さんはその場でお礼を言い、翌週には振り込みがありました。紙は1枚もありません。
ここまで、どこの家にもある光景です。ただ、このままだと3つの心配が残ります。
「あるとき払い」は、贈与と見られることがある
1つ目は税金の話です。国税庁は、親子の間のお金の貸し借りについて、こう説明しています。返す力や返し方から見て本当の貸し借りだと認められれば、借りたお金そのものは贈与になりません。
一方で、「あるとき払いの催促なし」や「出世払い」のような貸し借りは、借りたお金そのものが贈与として扱われます。和子さんの「いつでもええで」は、まさにこれです。無利子の場合も、利子にあたる分が贈与と扱われる場合があります。国税庁の説明
贈与と扱われると、贈与税の対象になります。贈与税は、1年間にもらった財産の合計から基礎控除の110万円を引いた残りにかかります。「贈与にするか、貸し借りにするか」を先に決めておくことが大切です。税額の計算や申告は税理士の仕事なので、当事務所では提携の税理士と連携します。
なお、はじめから「あげる」つもりなら、貸し借りの形にせず贈与として整えるほうが素直です。その場合は「生前贈与のご相談」で進め方を紹介しています。
借用書に書くことは、5つだけ
2つ目は「返す約束を忘れない」ためです。口約束でも貸し借りは成立しますが、10年たつと「あれ、いくらやったっけ」になります。書いておくのは、次の5つです。
- 日付(お金を渡した日)
- 金額
- 返し方(毎月いくら・いつまでに)
- 利息の有無
- 貸す人と借りる人、両方の署名と押印
これだけで十分です。「借用書」は、借りる人だけが署名して渡す形が多いものです。おすすめは、2人で署名して1通ずつ持つ形(金銭消費貸借契約書といいます)です。母も娘も、同じ紙を持っているのが安心です。金額に応じて収入印紙が要ります。
そして、返済は銀行振込にします。通帳に「由美→和子 25,000円」が毎月並ぶこと。これが「本当の貸し借り」のいちばん分かりやすい証拠です。手渡しだと、あとから証明できません。
きょうだいには、先に伝えておく
3つ目が、この記事でいちばんお伝えしたいことです。和子さんには、長男の健太さんもいます。
10年後、和子さんが亡くなりました。遺品を整理していた健太さんが、通帳を見て言います。
「姉ちゃん、この300万て何? 俺、聞いてへんで」
親が子に貸したお金は、親が亡くなると「返してもらう権利」として相続財産の一部になります。つまり、きょうだいで分ける対象です。借用書があれば「貸したお金で、残りはいくら」がはっきりします。なければ、「もらったんちゃうか」「いや借りたんや」の水かけ論になりかねません。
かりに贈与だったとしても、生前にもらった分は相続のときに計算に入ることがあります。どちらにせよ、紙があるほうが話は早いのです。
だから、借用書を作ったら、健太さんにも一言伝えておきます。「由美に300万貸してる。毎月返してもらってる」。これだけで、10年後の空気がまったく違います。あわせて、和子さんが遺言で「貸したお金の残りはこう扱う」と決めておく方法もあります。「遺言書の作成」で紹介しています。
逆に、親にお金を貸すときも同じ
「親の施設の入居金を、とりあえず私が立て替えた」。こういう場合も、考え方は同じです。あとで親のお金から返してもらうのか、きょうだいで分担するのか、それとも自分が負担するのか。決めて、紙にして、きょうだいに伝えます。
介護や実家の費用をどう分担するかも、同じように書面にできます。「家族・親族間の取り決めの書面化」でまとめています。
すでにもめているときは、弁護士へ
「返す・返さないで、もう言い合いになっている」。この段階になると、相手との交渉や代理は弁護士の仕事です。当事務所(行政書士)がお手伝いできるのは、家族の間で話がまとまっている内容を、正確な書面にするところまでです。「もめてはいないけど、自分では書けない」という段階が、いちばん向いています。
迷ったら、まずご相談を
この家族の話は架空ですが、「親子やのに紙なんて水くさい」と迷う方は、めずらしくありません。書いてみると、水くさいどころか、家族を守る1枚になります。
社会福祉士・FP・行政書士成宮事務所は、滋賀県彦根市の行政書士事務所です。借用書や契約書の作成だけでなく、返し方が家計に無理のないものかも、FPとして一緒に見ます。税務は提携の税理士と連携します。
初回相談は無料で、時間の制限はありません。相談だけで終わってもかまいません。契約書づくりの流れと費用は「親族・家族間の契約書作成」のページで紹介しています。
お電話は 090-9054-1513(電話の受付 9:00〜20:00)です。ご相談は予約制です。


