老後資金はいくら必要?年金だけで足りるかをシミュレーションする方法

年金だけで老後資金が足りるかどうかは、多くの方が漠然とした不安を抱えるテーマです。結論からお伝えすると、65歳から100歳までの35年間で考えた場合、年金収入に加えて約1,260万円〜1,300万円程度の準備が一つの目安となります(総務省「家計調査報告」2024年ベース)。ただし、この金額は将来の年金額の前提や生活スタイルによって大きく変わるため、ご自身の状況に応じたシミュレーションが欠かせません。

目次

年金だけで老後資金は足りるのか?

結論として、平均的なケースでは年金収入だけで生活費をすべて賄うことは難しく、毎月数万円程度の取り崩しが必要になるのが一般的です。

総務省「家計調査報告」(2024年)によれば、65歳以上の無職世帯では、2人暮らし世帯・一人暮らし世帯のいずれも実収入に対して支出が上回り、毎月の不足額は約3万円となっています。この不足分を65歳から100歳までの35年間(合計420か月)にわたって積算すると、約1,260万円〜1,300万円の準備が目安として導かれます。

なお、不足額の前提を変えるとシミュレーション結果も変わります。将来のモデル年金額が月額13万円程度まで下落する前提で支出を月26万円とした場合、65歳から95歳までの30年間で必要になる金額は約4,680万円〜5,000万円という試算もあります。前提条件(年金の下落幅、生活水準、想定寿命)によって必要額には数千万円単位の差が出るため、「老後資金はいくら必要か」という問いには一つの正解があるわけではなく、ご自身の年金見込額と生活費から個別に計算することが重要です。

将来の年金額は今の水準で計算してよいのか?

結論として、現在の年金額のままで老後資金を計算するのは危険です。将来の年金額は、現役世代の減少などにより現在より下がる可能性が指摘されています。

日本の公的年金制度は、現役世代が支払った保険料で高齢者の年金を支える「賦課方式」を採用しています。働き方によって加入する年金制度が異なり、自営業者やフリーランスは国民年金(第1号被保険者)、会社員や公務員は厚生年金と国民年金(第2号被保険者)、専業主婦・主夫等は国民年金(第3号被保険者)に加入します。

厚生労働省の「2019(令和元)年財政検証結果レポート」では、平均的な収入で40年間就業した夫と専業主婦の妻という夫婦世帯のモデル年金額について、現在の所得代替率61.5%(月額約22万円)が、最も悲観的なケース(ケースVI)では約30年後(2052年)に所得代替率36%(月額約12万9,000円)まで低下する見込みが示されています。つまり、現在の年金額をそのまま将来の前提にすると、必要な老後資金を過小評価してしまうおそれがあります。将来の年金額は、現在の水準ではなく下落シナリオも踏まえて確認しておくことが望ましいといえます。

自分の年金額はどうやって調べればよいのか?

結論として、「ねんきんネット」を使えば、自分の将来の年金見込額を具体的な条件で試算できます。

ねんきんネットは日本年金機構が提供するサービスで、マイナンバーカードがある場合は「マイナポータル」から、ない場合は誕生月に届く「ねんきん定期便」記載のアクセスキーを使って利用登録ができます。登録後は「詳細な条件で試算」メニューから、今後の職業や予定年収、受給開始年齢などの条件を自分で入力し、将来受け取れる年金見込額をグラフや一覧表で確認できます。

例えば、「60歳以降も同じ給与で働き続ける場合」「70歳まで受給を遅らせる場合」など複数の条件を比較することも可能です。なお、公的年金の繰り下げ受給は、原則65歳からの受給を1か月遅らせるごとに0.7%増額され、70歳で42%増、75歳まで遅らせると84%増額されます(2022年4月以降、上限年齢が70歳から75歳に延長)。ただし年金額が増えると税金や社会保険料の負担も増えるため、手取りで見た増加率は額面ほど大きくない点には注意が必要です。実際の見込額を把握するには、ねんきんネットでの試算が最も実情に近い方法といえます。

老後資金が不足する場合、どう備えればよいのか?

結論として、老後資金づくりの基本は「公的年金」「貯蓄・投資(iDeCo・NISA等)」「退職金」「長く働く」の4つを組み合わせることです。

iDeCo(個人型確定拠出年金)は2022年5月より加入年齢の上限が60歳未満から65歳未満に拡大されました。掛金が全額所得控除になる節税効果が大きい一方、原則60歳まで引き出せない制約があります。NISAは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の併用が可能になり、非課税保有限度額が最大1,800万円に拡大、非課税保有期間も無期限となっています。引き出しの自由度が高いため、資金使途に応じてiDeCoとNISAを使い分けることが一般的です。

また、60歳以降も厚生年金に加入して働き続けることで受給額を増やす方法もあります。例えば平均年収210万円で60歳から65歳まで働いた場合、年額約5万9,200円の増額が見込めるとされています。45歳など準備開始が遅れたと感じる場合でも、月3万円を利回り6%で20年間積み立てると65歳時点で約1,400万円に達する計算になり、決して遅すぎることはありません。ご自身の必要生活費と年金見込額の差額を把握したうえで、複数の手段を組み合わせて準備することが現実的な対策となります。

認知症など将来のリスクにはどう備えるべきか?

結論として、お金の準備だけでなく、認知症等により判断能力が低下した場合に財産管理ができなくなるリスクへの備えも、老後資金計画の一部として考える必要があります。

認知症等で判断能力が低下したと金融機関が判断した場合、口座が凍結され、本人だけでなく家族であっても窓口やATMで預金を引き出せなくなることがあります。生活費や施設費用の支払いに支障が出るおそれがあるため、判断能力が低下する前、あるいはその疑いが出始めた段階で対策を検討しておくことが重要です。

このようなリスクへの備えとして、成年後見制度(判断能力が不十分な方の財産管理や契約手続きを、家庭裁判所が選任した後見人が代わりに行う制度)や、家族信託の活用が選択肢となります。なお、成年後見制度は利用を開始すると原則として亡くなるまで専門家への報酬等の費用が発生し、家庭裁判所等への定期的な報告義務も生じる点は理解しておく必要があります。介護費用や医療費の備えとしては、介護費用が1人当たり総額でおよそ500万円〜600万円、医療費の自己負担額が1人当たり200万円〜400万円前後とされ、合わせて1人1,000万円程度の準備が目安とされています。資金面の準備と制度面の備えは、どちらか一方ではなく両方を併せて検討することが望ましいといえます。

事例で見る「老後資金シミュレーション」

50代後半の会社員Aさんは、定年後の生活に漠然とした不安を抱え、「年金だけで暮らせるのか」という相談に来られました。お話を伺うと、Aさんは現在の年金額(モデル年金月額約22万円)をもとに将来を考えており、年金額が将来下がる可能性についてはこれまで意識していなかったとのことでした。

そこで、まずはねんきんネットでご自身の年金見込額を確認していただき、将来の年金額が下落するシナリオも踏まえて、毎月の不足額を改めて見積もるところから始めました。あわせて、ご両親が高齢で離れて暮らしていることから、将来の口座凍結リスクや、もしものときの財産管理についても話題に上りました。

最終的にAさんには、iDeCoとNISAを組み合わせた資金準備を進めると同時に、ご両親については早めに家族で財産管理の方針を話し合っておくことをお勧めしました。実際にこうした「自分の老後資金」と「親の将来のリスク」が同時に相談に上がるケースは、彦根市の相続遺言相談会などでもよくお受けするご相談の一つです。資金準備と制度面の備えは別々の問題のように見えて、実は一体として考えるべきテーマであるとお伝えしています。

※本記事の内容は執筆時点の情報です。年金制度や税制、各種金額は変更される可能性があるため、最新の制度内容は専門家にご確認ください。

よくある質問(FAQ)

老後資金は2,000万円あれば足りますか?

一概には言えません。総務省データに基づく試算では約1,260万円〜1,300万円が目安とされる一方、将来の年金下落を前提とした試算では約4,680万円〜5,000万円が必要という結果もあります。生活水準や想定寿命によって必要額は大きく変わるため、ご自身の年金見込額と生活費から個別に確認することが重要です。

iDeCoとNISAはどちらを優先すべきですか?

老後資金づくりが主な目的であれば、所得控除による節税効果が大きいiDeCoを優先するのが一般的です。ただしiDeCoは原則60歳まで引き出せないため、途中で資金が必要になる可能性がある場合は、引き出し自由なNISAから始める方法もあります。

45歳から老後資金の準備を始めても遅すぎますか?

遅すぎることはありません。例えば月3万円を利回り6%で20年間積み立てた場合、65歳時点で約1,400万円に達する計算になります。早く始めるほど無理のない積立が可能になるため、気づいた時点から始めることが大切です。

親が認知症になると、預金はどうなりますか?

判断能力の低下が金融機関に認められると、口座が凍結され、本人も家族も原則として預金を引き出せなくなることがあります。生活費や施設費用の支払いに影響が出る前に、成年後見制度や家族信託などの利用を検討しておくことが望ましいです。

何歳まで働けば老後資金の不安は解消されますか?

一律の年齢はなく、ご自身の必要生活費と年金見込額の差額によって異なります。60歳以降も厚生年金に加入して働くことで受給額を増やすことができるため、不足分を補うために必要な年齢まで、無理のない範囲で働き続けることが一つの目安になります。

まとめ

老後資金が年金だけで足りるかどうかは、将来の年金額の前提次第で必要額が数千万円単位で変わるため、まずはねんきんネットで自分自身の年金見込額を確認し、生活費との差額を把握することが第一歩です。資金面の準備(iDeCo・NISA・就労継続など)と、認知症等のリスクに備えた財産管理の検討は、別々の課題ではなく一体として進めることをお勧めします。具体的な状況によって最適な対策は異なりますので、詳しくはご相談ください。

ご相談について

不足額が具体的になったら、次は制度面の備えを検討する段階です。老後の備え・生前対策のご相談を承っています。

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初回のご相談は無料です(時間制限はありません)。ご相談だけで終わっても構いません。彦根市を中心に、長浜市・米原市・東近江市を含む滋賀県全域に対応しています。

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この記事を書いた者

成宮隆行 なるみや たかゆき

【保有資格】
社会福祉士(登録番号178261)
ファイナンシャルプランナー(AFP)・2級FP技能士
宅地建物取引士
行政書士(行政書士登録番号第23252144号/日本行政書士会連合会・滋賀県行政書士会会員)
【職歴】
外資系生命保険会社
司法書士事務所での勤務
社会福祉士・FPとして独立
行政書士成宮事務所を開設
【専門分野】
社会福祉士会のぱあとなあ滋賀に所属し、成年後見業務を中心に活動。行政書士事務所開設後は、遺言・終活・生前対策・相続対策にも注力している。
【相談員等】
彦根市:相続遺言相談会相談員、福祉関係相続等研修会:講師

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