※登場するのは架空の人物で、実際の相談をもとにしたものではありません。
長年介護してくれた息子の妻に、財産を遺したい。そう思う親御さんと、そのご家族に向けた記事です。結論から言うと、息子の妻は相続人ではないので、何もしなければ財産は届きません。遺言で遺しておくのが、話が早い方法です。
彦根に住むキヨさん(80代)は、長男夫婦と同居しています。ここ数年、身の回りのことは長男の妻の由美子さんが支えてくれています。
ある日、キヨさんがぽつりと言いました。
「由美子さんにも、何か残してあげたいんやけどなあ」
長男が答えます。「母さん、うちの嫁は相続人ちゃうんやで」
「え、そうなん? あんなに世話になってるのに」
「せやから、何もせんかったら由美子には一円も行かへんのや」
キヨさんと長男は、どうすればいいのか調べてみることにしました。
息子の妻は、なぜ相続人ではないの?
相続人になれるのは、血のつながった家族と配偶者が中心だからです。息子の妻は親族ではあっても、相続人には入りません。
法律では、配偶者は常に相続人です。そのほかは、子、(子がいなければ)親など、(それもいなければ)兄弟姉妹の順に決まります。
息子の妻は、結婚によってつながった「姻族(いんぞく)」です。親族の一員ではありますが、この順番のどこにも入っていません。
では、長男が先に亡くなっていたらどうでしょう。この場合も、妻が代わりに相続人になることはありません。長男の子、つまりキヨさんの孫が相続人になります(代襲相続)。
「特別寄与料」は請求できる。でも、あてにしにくい理由
介護した息子の妻が、お金を請求できる制度はあります。ただ、条件も手続きも重く、あてにするのは難しいのが実情です。
その制度が「特別寄与料(とくべつきよりょう)」です。2019年の民法改正で新しくできました。仕組みをまとめると、次のとおりです。
- 対象は、無償の介護などで財産の維持や増加に「特別の貢献」をした親族
- 亡くなった後に、相続人に対して、貢献に応じたお金を請求する
- 話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所に申し立てる
- 期限は、相続が始まったことと相続人を知ってから6か月、または亡くなってから1年
つまり由美子さんは、キヨさんが亡くなった後に、義理のきょうだいへ「お金を払ってください」と言わなければなりません。しかも、短い期限の中でです。
介護をねぎらうための制度でも、自分から言い出すのは気が重いものです。だからこそ、生きているうちに本人が決めておく意味があるのです。
遺言で「遺贈」しておけば、本人の意思で届けられる
遺言に書いておけば、相続人でない由美子さんにも財産を渡せます。これを「遺贈(いぞう)」といいます。
何を、どれだけ渡すか。決めるのはキヨさん自身です。預金の一部でも、思い出の品でもかまいません。
書くときの注意は、3つあります。
- 公正証書遺言にする。公証人が作る遺言なので、形式の不備や紛失の心配が少なくなります
- 遺言執行者(ゆいごんしっこうしゃ)を決めておく。遺言の内容を実際に実行する人です
- 遺留分(いりゅうぶん)に配慮する。ほかの相続人に法律で保障された最低限の取り分で、これを下回ると請求される可能性があります
なお、相続人でない人が財産を受け取ると、税金の扱いが変わることがあります。必要なときは、提携の税理士と一緒に確かめます。
気持ちは「付言事項」で家族に伝える
「なぜ由美子さんに遺すのか」は、付言事項(ふげんじこう)に書いておきましょう。遺言の最後に添える、家族へのメッセージです。
法律上の効力はありません。それでも、理由が書いてあるだけで、ほかの家族の受け止め方が変わります。
たとえば、こんな一文です。
「由美子さんには、長い間、身の回りの世話をしてもらいました。感謝の気持ちとして、預金の一部を遺します。みんな、どうか分かってください」
まとめ:元気なうちに、遺言で決めておく
息子の妻は相続人ではありません。感謝を形にしたいなら、遺言で遺贈しておけば、本人の意思を形にして届けられます。
キヨさんはその後、由美子さんに預金の一部を遺す公正証書遺言を作りました。付言事項には、感謝の言葉を添えました。
「これで安心して長生きできるわ」と、キヨさんは笑っていました。
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※この記事の人物とお話は架空のものです。


