「年金だけでは不安」と感じたら?相談前に確認したい家計チェックポイント

「年金だけでは老後が不安」と感じる方の多くは、実は「今いくら資産があり、将来いくら必要になるか」を具体的に把握できていないだけです。相談の前に、収入と支出の現状、将来の年金見込額、資産の棚卸しという3点を自分の手で確認しておくことで、不安の正体が明確になり、専門家への相談もより的確かつ短時間で進められるようになります。

目次

「年金だけでは不安」を感じたら、まず何を確認すべき?

まず確認すべきは「現在の収支」と「将来の年金見込額」の2点です。

老後への不安の多くは、漠然とした感覚であり、実際の数字を把握していないことが原因です。毎月の収入と支出(フロー)と、現在の預貯金などの資産(ストック)を分けて把握することで、不安を「対応可能な課題」に変換できます。

具体的には、1年間の手取り収入と支出を書き出すことから始めます。手取り収入は給与の差引支給額やボーナスを基に、支出は住居費・保険料・通信費などの項目ごとに分けて整理します。年間支出を簡易的に把握する方法として、6カ月分の支出を集計して2倍にするやり方もあります。また、毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」は、50歳未満では「これまでの加入実績」に応じた金額、50歳以上では「60歳まで現在の加入状況が続いたと仮定」した見込額が記載されており、年齢によって意味合いが異なる点に注意が必要です。

つまり、相談前にまず行うべきは、収入・支出・年金見込額という3つの数字を可視化することだと言えます。

老後の生活費はいくらかかる?データで見る目安

老後の生活費は、総務省の調査によれば夫婦2人世帯で月26万〜28万円程度、単身世帯で月16万円程度が目安とされています。

ただしこれは平均値であり、実際の収支は年金額や住居の状況、健康状態によって変わります。あくまで「自分の場合と比較するための基準値」として捉えることが大切です。

総務省「家計調査報告」によれば、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、実収入が約24万円に対し消費支出などが約27万円となり、平均で毎月約3万円の赤字が生じているとされます。さらに厚生労働省「2019(令和元)年財政検証結果レポート」(悲観的なケースであるケースVI)では、現在のモデル年金(所得代替率61.5%、月額約22万円)が、約30年後の2052年には所得代替率36%、月額約12万9000円まで下がる可能性も指摘されています。

老後の生活費は「平均はいくらか」だけでなく、「自分の場合はいくら不足する可能性があるか」を数字で確認することが重要です。

医療費・介護費はどの程度見込めばいい?

生涯医療費の平均は約2700万円とされ、そのうち約半分は70歳以降にかかるとされています。

医療費に加えて介護費用についても、平均的な期間と金額をあらかじめ把握しておくことで、将来発生しうる特別支出への備えが立てやすくなります。

厚生労働省「生涯医療費(令和2年度推計)」によれば、1人当たりの生涯医療費は平均約2700万円で、そのうち51%が70歳以降に発生するとされています。また、生命保険文化センターの調査(2024年)では、介護期間の平均は4年7カ月、月々の費用平均は9万円、一時的にかかる費用の合計平均は47.2万円とされています。なお、高額療養費制度(医療費の自己負担が一定額を超えた場合に超過分が払い戻される制度)により負担には上限がありますが、差額ベッド代や食事代、先進医療費などは対象外となる点には注意が必要です。

医療費・介護費は「いつか」ではなく「ある程度の確率で発生するもの」として、人生年表に組み込んでおくことが望まれます。

事例で見る「年金だけでは不安」を感じたときの家計チェック

ご相談の中には、「年金だけでは老後が不安だが、何から手をつければいいか分からない」というお話をよくお伺いします。たとえば、貯蓄額や加入している保険の内容はご自身で把握されていても、将来受け取れる年金の見込額や、老後の生活費の目安については確認したことがない、というケースは少なくありません。

このような場合、まず「ねんきんネット」を使った年金見込額のシミュレーションと、直近1年間の収支の書き出しをご提案することがあります。実際に数字として見える形にしてみると、それまで漠然としていた不安が、「お金が足りるかどうか分からない」という感覚から、「毎月あと数万円をどう準備するか」という具体的な課題に変わることが多くあります。中には、見込額を確認したことで「思っていたより不足は小さい」と分かり、これまでの過度な節約をやめられた、という方もいらっしゃいます。逆に、不足額がはっきりしたことで、保険の見直しや資産運用の検討に踏み出された方もいます。

このように、相談前にご自身で現状を可視化しておくことで、専門家との相談もより具体的で実りあるものになります。

※本事例は、複数のご相談内容をもとに一般化・再構成したものであり、特定の個人を示すものではありません。

よくある質問(FAQ)

ねんきん定期便に書かれている年金見込額は、そのまま信じていい?

年齢によって計算方法が異なる点に注意が必要です。50歳未満の方への見込額は「これまでの加入実績」に基づくもので、50歳以上の方への見込額は「現在の加入状況が60歳まで続いた場合」を仮定したものです。今後の働き方や受給開始年齢によって実際の金額は変わるため、より詳しく知りたい場合は「ねんきんネット」のシミュレーターを利用するとよいでしょう。

老後の生活費は、誰でも同じくらいかかるもの?

いいえ、世帯構成や住居の状況、健康状態によって大きく異なります。総務省の調査による月26万〜28万円(夫婦世帯)といった数字はあくまで平均的な目安であり、ご自身の場合に当てはめるには、まず現在の生活費を書き出して比較することが必要です。

年金の繰り下げ受給をすれば、必ず家計が楽になる?

一概にそうとは言えません。繰り下げ受給で受給額が増えると、それに応じて住民税や国民健康保険料、介護保険料などの負担も増える可能性があります。額面の増加だけでなく、手取り額への影響まで含めてシミュレーションすることが重要です。

家計簿をつけるのが苦手でも、老後資金の準備はできる?

できます。毎月の給与から確実に貯められる金額をあらかじめ自動積立(定期預金やiDeCo、NISAなど)に回し、不足分をボーナス等で補うという考え方もあります。日々の家計簿をつけるよりも、年間単位での貯蓄計画を立てる方法が向いている方もいます。

親や自分が認知症になった場合の財産管理についても、今から考えておくべき?

早めの検討をおすすめします。認知症などで判断能力が低下すると、銀行口座が凍結され、本人や家族であっても自由に資金を動かせなくなることがあります。任意後見制度や家族信託(判断能力が十分なうちに、将来の財産管理を任せておく仕組み)といった対策は、判断能力が十分なうちにしか選択できないため、家計の見直しと合わせて検討しておくことが望まれます。具体的にどの方法が適しているかは個別の事情により異なりますので、詳しくは専門家にご相談ください。

まとめ

「年金だけでは不安」という感覚は、収入・支出・将来の年金見込額・資産状況を可視化することで、具体的に対応できる課題に変えることができます。まずはご自身で現状を整理し、その上で必要に応じてファイナンシャルプランナーや司法書士などの専門家に相談することで、ご自身の状況に合った、より的確な対策を立てやすくなります。

ご相談について

不足額が見えてきたら、次は制度面の備えを検討する段階です。老後の備え・生前対策のご相談を承っています。判断能力が十分なうちにできる備えとしては、任意後見契約のご相談も承っています。

「年金だけでは不安」と感じている方へ

初回のご相談は無料です(時間制限はありません)。ご相談だけで終わっても構いません。彦根市を中心に、長浜市・米原市・東近江市を含む滋賀県全域に対応しています。

ご相談内容の秘密は厳守します。医療・介護の個別判断は主治医やケアマネジャーと連携して進めます。

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この記事を書いた者

成宮隆行 なるみや たかゆき

【保有資格】
社会福祉士(登録番号178261)
ファイナンシャルプランナー(AFP)・2級FP技能士
宅地建物取引士
行政書士(行政書士登録番号第23252144号/日本行政書士会連合会・滋賀県行政書士会会員)
【職歴】
外資系生命保険会社
司法書士事務所での勤務
社会福祉士・FPとして独立
行政書士成宮事務所を開設
【専門分野】
社会福祉士会のぱあとなあ滋賀に所属し、成年後見業務を中心に活動。行政書士事務所開設後は、遺言・終活・生前対策・相続対策にも注力している。
【相談員等】
彦根市:相続遺言相談会相談員、福祉関係相続等研修会:講師

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