※登場するのは架空の人物で、実際の相談をもとにしたものではありません。
財産の一部を、地元や母校に寄付したい。遺言で寄付することを「遺贈寄付(いぞうきふ)」といいます。ただし、「寄付する」と書いただけでは届かないことがあります。書く前に、受け取ってもらえる形か、税金、実行する人の3つを確かめておきましょう。
彦根に住む和子さん(70代)は、夫を見送り、子どもたちも独立しました。
「この土地はな、生まれ育った町の役に立ててほしいんや。それと、母校にも少し」
長女が聞きます。「お母さん、土地って、そのまま寄付できるもんなん?」
「さあ……。遺言に書いといたら、なんとかなるんちゃうの」
二人は、確かめることにしました。
確かめること①:その寄付先は、その財産を受け取ってくれる?
寄付先によっては、現金しか受け取りません。土地や建物をそのまま寄付すると書いても、実現しないことがあります。
滋賀県内でも、公表されている条件は「現金のみ」が目立ちます(当事務所が2026年8月に各機関の公表内容を確認したものです)。
| 寄付先 | 公表されている受け取りの条件 |
|---|---|
| 滋賀県 | 現金のみ。不動産・有価証券などは受け付けていない |
| 長浜市 | 現金のみ |
| 米原市 | 現金のみ |
| 彦根市立病院 | 原則として寄附金(現金)で |
土地を寄付したいときは、「土地を売って、その代金から費用と税金を引いた残りを寄付する」と遺言に書く方法があります。これを清算型遺贈(せいさんがたいぞう)といいます。
寄付先には、受け取りを断る自由もあります。書く前に寄付先へ問い合わせ、断られた場合の行き先(予備の定め)も決めておくと安心です。
確かめること②:売って寄付すると、税金がかかることがある
土地や株を法人に遺贈すると、亡くなった本人が時価で売ったものとみなされます。買ったときより値上がりしていれば、その分に所得税がかかります。
この所得税は、相続人が亡くなってから4か月以内に申告して納めます。代金を全部寄付すると決めていると、納めるお金が手元に残らないことがあります。
ただし、寄付先によって扱いが変わります。
- 国や県・市町への寄付:この所得税はかからない扱いになる
- 公益法人などへの寄付:国税庁の承認を受ければ、かからない扱いになる。申請の期限は短い
- そのほかの法人への寄付:値上がり分に所得税がかかる
納めるお金をどこから出すかまで、遺言を書く段階で決めておきます。税額の計算は、提携の税理士と一緒に確かめます。
確かめること③:誰が実行する? 遺言執行者を決めておく
遺言は、書いただけでは実行されません。土地を売り、代金を寄付先へ渡し、相続人に報告する人が要ります。それが遺言執行者(ゆいごんしっこうしゃ)です。
寄付先の中には、遺言執行者を決めておくことを勧めているところもあります。清算型遺贈では、遺言執行者が売却の手続きを進めます。家族に任せると、仕事を休んで不動産屋や銀行を回ることになりかねません。
誰に頼むかは「遺言執行」のページでくわしく説明しています。
相続人がいない人こそ、行き先を決めておく
子どもも兄弟姉妹もいないなど、相続人がいない人もいます。遺言がなく相続人もいなければ、財産は最終的に国のものになると民法で決まっています。
「お世話になった病院に」「暮らした町に」と思う先があるなら、遺言で寄付先を決めておけば、自分で選んだ先に財産を渡せます。相続人がいない場合は、手続きを引き受ける遺言執行者がとくに大切です。
書く前に、手元にそろえておくもの
相談の前に、次のものを分かる範囲でそろえておくと、話が早く進みます。
- 財産の一覧(預貯金・土地や建物・株など。固定資産税の納税通知書があると便利です)
- 寄付したい先の候補(団体名、分かれば連絡先)
- どの財産を、どれくらい寄付したいかの考え
- 家族の構成(子・兄弟姉妹の有無)
寄付先が決まっていない段階でもかまいません。滋賀県内の受け入れ先の条件を見ながら、一緒に考えることもできます。
家族がいるなら、家族の取り分にも配慮を
子どもなど遺留分(いりゅうぶん)を持つ家族がいる場合、寄付が大きすぎると、家族が寄付先に請求できることがあります。家族への配分と寄付の割合は、全体を見て決めましょう。
相続人でない人へ遺すときの税金は「孫や息子の妻に遺言で遺すと、相続税は2割増し?」で紹介しています。
まとめ:書く前に確かめれば、寄付は届けやすくなる
遺贈寄付は、受け取ってもらえる形か、税金、実行する人の3つを確かめてから書くと、届けたい先に届きやすくなります。
和子さんは、町と母校に問い合わせてから、土地を売って代金を寄付する公正証書遺言を作りました。納税の分を残すことと、遺言執行者も書き入れました。
「ちゃんと届くようにしといたら、気持ちもすっきりするなあ」と、和子さんは話していました。
社会福祉士・FP・行政書士成宮事務所(滋賀県彦根市)では、寄付先への確認から遺言書の原案、公正証書遺言の準備、遺言執行者としての実行まで、行政書士がお手伝いします。くわしくは「遺贈寄付」をご覧ください。お電話(090-9054-1513・9:00〜20:00)でも、メール・LINEでもご相談いただけます。初回のご相談は無料です。
※この記事の人物とお話は架空のものです。


