※登場するのは架空の人物で、実際の相談をもとにしたものではありません。
孫や息子の妻、おい・めいに遺言で財産を遺すと、その人の相続税は2割増しになります。これを「相続税の2割加算」といいます。ただし、相続税がかからない家なら関係ありません。増える分があっても、遺言がなければ財産そのものが届かないことのほうが問題です。
彦根に住む和夫さん(80代)は、妻に先立たれ、長男夫婦と暮らしています。通院の付き添いは長男の妻の美香さん。大学生の孫の翔太さんも、休みのたびに顔を見せてくれます。
「美香さんと翔太にも、少しずつ遺したいんや」
和夫さんがそう言うと、長男が首をかしげました。
「父さん、それ、税金が2割増しになるって聞いたで」
「なんやて。ほな、やめといたほうがええんか」
二人は、まず仕組みから調べてみることにしました。
相続税の「2割加算」とは? 対象になる人・ならない人
亡くなった人の配偶者・子・父母以外が財産を受け取ると、その人の相続税が2割増しになります。たとえば、本来の税額が100万円なら120万円です。
対象になるかどうかは、次の表で分かります。
| 受け取る人 | 2割加算 |
|---|---|
| 配偶者 | なし |
| 子(養子を含む)・父母 | なし |
| 孫(子が先に亡くなり、代わりに相続人になった場合) | なし |
| 孫(子が健在の場合。孫を養子にした場合も原則) | あり |
| 子の配偶者(息子の妻など) | あり |
| 兄弟姉妹・おい・めい | あり |
| 内縁の妻・夫、友人など | あり |
和夫さんの場合、長男が健在なので、翔太さんは対象です。美香さんも対象になります。
子のいない夫婦で兄弟姉妹が相続人になる場合も、兄弟姉妹は対象です。遺言の有無にかかわらず、2割加算がかかります。
2割加算のほかに、変わることが3つある
相続人でない人が受け取ると、税金の扱いがほかにも変わります。主なものは次の3つです。
- 生命保険金の非課税枠が使えない:死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。ただし、相続人でない人が受け取った保険金には使えません
- 不動産の登記の税率が上がる:相続人が受け取るときの登録免許税は、不動産の価額の0.4%です。相続人以外への遺贈では2%になります
- 生前の贈与が計算に戻ることがある:遺言で財産を受け取る人が、亡くなる前の数年間に贈与を受けていると、その分が相続税の計算に足されることがあります。孫に毎年お小遣いや学費を渡している家は、とくに確認が要ります
どれも、受け取る人と渡し方の組み合わせで結果が変わります。自分の家に当てはめるときは、提携の税理士と一緒に確かめます。
そもそも相続税がかかる家か、先に確かめる
2割加算は、相続税がかかるときの話です。財産の総額が基礎控除の範囲に収まれば、相続税そのものがかからず、2割加算も関係ありません。
基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。和夫さんのように相続人が長男1人なら、3,600万円までは相続税がかかりません。
自宅の評価額、預貯金、生命保険などを一度書き出してみましょう。それだけで、心配すべきかどうかの見当がつきます。
税金が増えても、遺言で渡す意味はある
息子の妻や、子が健在のときの孫は、相続人ではありません。遺言がなければ、どれほど世話になっていても財産は届きません(くわしくは「介護してくれた息子の妻に、財産を遺したい」)。
税金が2割増えても、受け取る額が減るのはその税金の分だけです。遺言がなければ、受け取れるのは0円です。どちらを選ぶかは、渡したい本人が決めることです。
迷う場合は、渡し方を組み合わせる方法もあります。たとえば、自宅は長男に相続させ、美香さんと翔太さんには預金の一部を遺贈する、といった形です。税の試算を見てから、遺す割合を決めることもできます。
遺贈をスムーズに届けるには、遺言執行者を決めておく
相続人でない人へ遺贈するときは、遺言執行者(ゆいごんしっこうしゃ)を決めておきましょう。遺言の内容を実際に手続きする人です。
民法では、遺言執行者がいる場合、遺贈の手続きは遺言執行者だけが行えるとされています。執行者がいないと、銀行や登記の手続きで、相続人全員の協力が要る場面が出てきます。
受け取るのが息子の妻や孫であれば、ほかの相続人に「署名してください」と頼むのは気が重いものです。執行者を決めておけば、その負担を減らせます。誰に頼むかは「遺言執行」のページでくわしく説明しています。
まとめ:渡したい人がいるなら、税の見通しと遺言をセットで
孫や息子の妻、おい・めいへの遺贈には、相続税の2割加算がかかることがあります。ただ、相続税がかからない家なら関係ありません。かかる家でも、遺言がなければ財産は届きません。
和夫さんは財産を書き出してみて、相続税はかからない見込みだと分かりました。美香さんと翔太さんに預金の一部を遺す公正証書遺言を作り、遺言執行者も決めました。
「これで、言いにくいことを家族に頼まんですむな」と、和夫さんはほっとした様子でした。
社会福祉士・FP・行政書士成宮事務所(滋賀県彦根市)では、誰に何を遺すかの整理から、公正証書遺言の準備、遺言執行まで、行政書士がお手伝いします。税の試算が必要なときは、提携の税理士と連携します。くわしくは「遺言書の作成」をご覧ください。お電話(090-9054-1513・9:00〜20:00)でも、メール・LINEでもご相談いただけます。初回のご相談は無料です。
※この記事の人物とお話は架空のものです。


