※登場するのは架空の人物で、実際の相談をもとにしたものではありません。
一時払い終身保険は、保険料を最初に1回でまとめて払い、一生涯の死亡保障を持つ生命保険です。亡くなったときは、決めておいた受取人に死亡保険金が支払われます。預金と違い、受け取る人と時期を前もって決めておけるのが特徴です。
彦根に住む節子さん(70代)は、定期預金の満期の案内を受け取りに、銀行の窓口へ行きました。
「満期になったお金、一時払いの終身保険にされる方も多いですよ」
窓口の人にそう言われ、パンフレットを持ち帰りました。
「保険って、毎月払うもんやと思てたわ。預金とどう違うんやろ」
節子さんは、娘の真理さんに電話しました。
一時払い終身保険の仕組み
一時払い終身保険は、名前の2つの言葉で中身が分かります。
- 一時払い:保険料を、契約のときに1回でまとめて払う
- 終身:保障が一生続き、何歳で亡くなっても死亡保険金が出る
払ったお金は、保険会社が運用します。亡くなったときには、決めておいた受取人が死亡保険金を受け取ります。生きているうちに解約すれば、そのときの解約返戻金(解約したときに戻るお金)を受け取れます。
預金との違い
節子さんが気にしているのは、定期預金とどう違うかです。主な違いを表にまとめます。
| 定期預金 | 一時払い終身保険 | |
|---|---|---|
| お金を引き出す | いつでも解約できる | 解約できるが、早いと元本を下回ることがある |
| 亡くなったとき | 遺産になり、相続人の話し合いで分ける | 受取人が自分で請求して受け取る |
| 相続税 | そのまま財産として数える | 非課税の枠がある(相続人が受け取る場合) |
| 守る仕組み | 預金保険制度 | 生命保険契約者保護機構 |
いちばん大きな違いは、亡くなったときです。預金は遺産になり、相続人全員の話し合いや手続きが済むまで、すぐには使えないことがあります。死亡保険金は、受取人が保険会社に請求して受け取ります。
非課税の枠については「生命保険の非課税枠」の記事で、受取人の決め方は「生命保険の受取人で「誰に渡すか」を決める」の記事で詳しく紹介します。
誰が払い、誰が受け取るかで税金が変わる
生命保険は、3人の役割で成り立っています。保険料を払う人、保険の対象になる人(被保険者)、保険金を受け取る人(受取人)です。
相続の準備で使うのは、親が保険料を払い、親自身を被保険者にして、子などを受取人にする形です。この形なら、死亡保険金は相続税の対象になり、相続人が受け取れば非課税の枠も使えます。
保険料を払う人と受け取る人の組み合わせが変わると、所得税や贈与税の対象になることがあります。詳しくは「生命保険金の課税区分とは?」をご覧ください。
気をつけたい3つのこと
一時払い終身保険には、預金にはない注意点があります。
- 早い時期に解約すると、戻るお金が払った保険料より少なくなることがある
- 外貨建ての保険は、為替の動きで、受け取る円の額が増えも減りもする
- 年齢や健康状態によっては、契約できないことがある
特に1つ目は大切です。生活費や医療・介護の費用まで保険に入れてしまうと、必要なときに損をして解約することになりかねません。
なお、契約した後でも、条件を満たせばクーリング・オフ(契約の取り消し)ができます。パンフレットや契約の書類で、期間と方法を確かめておきましょう。
向く人・向かない人
一時払い終身保険が相続の準備として向くのは、次のような人です。
- 当面使わない預金があり、亡くなったときに家族へ渡したい
- 特定の家族に、確かにお金を渡したい
- 相続人の数に応じた非課税の枠を使いたい
反対に、次のような人には向かないことがあります。
- 手元の預金が、これからの生活費や介護の費用でぎりぎり
- 数年のうちに使う予定のお金がある
- 為替や運用の動きが心配で、落ち着かない
「保険にするかどうか」より先に、「いくらまでなら使わずに置いておけるか」を家計で確かめることが出発点です。
まとめ:保険は「家計の残り」で考える
一時払い終身保険は、受取人と渡す額を前もって決めておける、相続の準備の道具の一つです。ただ、預金と違って、早く解約すると損をすることがあります。
節子さんは、真理さんと一緒に、これからの生活費と介護の費用を書き出してみました。
「使わずに置いておけるのは、思てたより少なかったわ。決める前に計算してよかった」と、節子さんは話しています。
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