※登場するのは架空の人物で、実際の相談をもとにしたものではありません。
遺留分を請求されて払ったときは、払った分だけ相続税を見直せます。金額が決まったと知った日の翌日から4か月以内に、税務署へ「更正の請求」をします。ただし、お金の代わりに土地などで払うと、所得税がかかることがあります。
東近江に住む健二さん(50代)は、父の遺言で実家と田畑を受け継ぎました。相続税の申告も済ませた半年後、妹から手紙が届きます。
「お兄ちゃん、私にも遺留分があるはずやから、払ってほしい」
遺留分は「お金で払う」のが原則
遺留分は、子や配偶者などに法律で保障された、最低限の取り分です。遺言で取り分が少なくなった人は、多く受け取った人に、足りない分をお金で払うよう求められます。兄弟姉妹には遺留分はありません。
取り分の目安は、子や配偶者なら、法律で決まった割合(法定相続分)の半分です。健二さんの家は、母がすでに亡く、子は健二さんと妹の2人です。妹の法定相続分は2分の1なので、遺留分はその半分の4分の1になります。
この仕組みは、2019年7月の法律の改正で「お金で払う」形に改められました。請求できるのは、相続と遺言の中身を知った時から1年、知らなくても亡くなってから10年までです。
遺留分の基本は「遺留分とは?」で紹介しています。
払った側:相続税を見直して、払いすぎを戻す
健二さんは、受け継いだ財産の全部に相続税を払っています。妹に払う分は、結果として健二さんの手元に残りません。
そこで、払う金額が決まったら、相続税を計算し直して、払いすぎた分を戻してもらえます。
- 手続き:税務署への「更正の請求」
- 期限:払う金額が決まったと知った日の翌日から4か月以内
- 決まる場面:話し合いでの合意、調停の成立、判決など
「請求の手紙が届いた日」ではなく、「金額が決まった日」から数えるのがポイントです。
受け取った側:相続税の申告をすることになる
妹のほうは、受け取ったお金に相続税がかかることがあります。すでに申告していれば申告を直し、まだなら新たに申告をすることになります。
一方が税金を戻してもらい、もう一方が税金を払う。遺留分のお金が動くと、家族の間で相続税のつじつまを合わせ直す、というイメージです。
「お金がないから土地で払う」の落とし穴
健二さんの財産は、ほとんどが実家と田畑です。すぐに現金を用意できず、「田んぼを1枚渡せばええやろ」と考えました。
ところが、お金の代わりに土地を渡すと、税金の上では「土地を売って、そのお金で払った」のと同じ扱いになります。
| お金で払う | 土地で払う | |
|---|---|---|
| 払った側の所得税 | かからない | 原則として、土地を売ったときと同じ税金(譲渡所得)の対象 |
| 受け取った側の相続税 | 受け取ったお金に相続税 | 土地ではなく「お金を受け取った」として計算 |
| 受け取った土地の自宅の特例 | — | 使えない |
土地の値上がり分によっては、健二さんに所得税がかかります。受け取った妹も、その土地に自宅の土地の特例(評価を80%下げる仕組み)を使えません。
すぐに払えないときは、裁判所に支払いを待ってもらうよう求める方法もあります。土地で払う前に、税理士に税金を確かめてもらいましょう。
交渉は弁護士、税金は税理士
遺留分の金額で折り合わないときの交渉や調停は、弁護士の仕事です。相続税の見直しと所得税の計算は、税理士の仕事です。行政書士は、遺留分の請求の交渉には関わりません。
健二さんは、弁護士と税理士に相談しながら、田畑を売ったお金で妹に払うことにしました。
遺言を書く側が、先にできる3つの備え
健二さんの父が遺言を書く前に、できたこともあります。
- 遺留分を計算して、ほかの子にも最低限を遺す
- 多く継ぐ子が払えるよう、生命保険で現金を用意する
- 遺言に「なぜこう分けるか」の気持ち(付言)を書いておく
特に、家や田畑など分けにくい財産を一人に継がせるときは、払うお金の用意が大切です。生命保険の使い方は「実家を継ぐ子と、ほかのきょうだい。生命保険と遺言で「釣り合い」をとる方法」で紹介しています。
田畑を遺言で遺すときの手続きは「農地を遺言で残すとき|農地法の許可・届出と税金」にまとめました。
まとめ:請求されたら「お金で、期限内に」
遺留分を払ったら、金額が決まったと知った日の翌日から4か月以内に、相続税を見直せます。土地で払うと、所得税や特例の落とし穴があります。そして、偏った分け方をするなら、書く側が先に備えておくことが、家族の負担をいちばん軽くします。
社会福祉士・FP・行政書士成宮事務所(滋賀県彦根市)では、遺留分に配慮した遺言の中身の整理から公正証書遺言の準備まで、行政書士がお手伝いします。FPとして、払うお金の用意も一緒に考えます。進め方は「遺言書の作成・活用のご相談」をご覧ください。お電話(090-9054-1513・9:00〜20:00)でも、メール・LINEでもご相談いただけます。初回のご相談は無料です。
※この記事の人物とお話は架空のものです。


