親が住んでいる実家。誰が継ぐのか、まだ決まっていない。この記事では、遺言がなかった家とあった家を並べて、実家の行方がどう変わるかをお伝えします。
登場するのは架空の家族です。実際の相談をもとにしたものではありません。
父が亡くなって半年。実家の名義は、まだ父のまま
彦根市の郊外。築40年の一軒家に、父が一人で暮らしていました。子どもは3人。長男の正人さんは市内、長女の恵子さんは京都、次男の大介さんは東京です。
その父が、春に亡くなりました。四十九日が終わり、季節は夏になりました。でも、実家の名義は父のままです。
「兄さんが住めばいいやん」と恵子さん。
「俺はもう家を建てとる」と正人さん。
「売って分けるのが公平やろ」と大介さん。
3人とも悪くありません。ただ、話がまとまらないのです。
遺言がないと、実家は「みんなのもの」で止まる
遺言がない場合、亡くなった人の財産は、相続人全員の話し合いで分け方を決めます。これを「遺産分割協議」といいます。
話し合いがまとまるまで、実家は相続人全員の共有です。誰か一人の判断で売ることも、名義を変えることもできません。正人さんの家は、まさにこの状態でした。
家は待ってくれません。庭の草は伸び、雨どいは詰まり、ご近所から「どなたか管理されていますか」と声がかかります。空き家のまま月日が過ぎると、傷みは早まります。話し合いの進め方は「遺産分割協議に関する基礎知識」で、きょうだいで意見が割れたときの考え方は「実家の相続できょうだいの意見が割れたら」で紹介しています。
相続登記は「3年以内」が決まりになりました
2024年4月から、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記をすることが義務になりました。正当な理由がなく怠ると、10万円以下の過料(罰金に似た制裁)を科されるおそれがあります。
2024年4月より前の相続で、まだ登記していない実家も対象です。こちらは2027年3月31日までが期限です。「祖父の名義のまま」という家は、早めに確かめておくと安心です。法務省の案内
話し合いがまとまらないときは、「自分は相続人です」と法務局に申し出る簡易な方法(相続人申告登記)もあります。ただし、あとで分け方が決まったときや売るときには、あらためて相続登記が必要です。登記の実務は提携の司法書士と連携します。
時間を巻き戻す。もし、遺言があったら
ここで、この家族の時間を巻き戻してみます。父が元気だった、3年前の秋です。
正人さんが縁側で父に聞きました。「この家、この先どうしたい?」父はしばらく考えて、こう言いました。
「大介が、いつか戻ってくるかもしれん。家は大介に残したい。恵子と正人には、預金を多めに」
父はその冬、公証役場で遺言を作りました。「自宅の土地と建物は大介に相続させる。預金は恵子と正人で分ける」。
この遺言があれば、父が亡くなったあと、実家は大介さんが単独で相続登記をして、住むか、貸すか、売るかを自分で決められます。きょうだいで話し合う必要はありません。恵子さんと正人さんには、父が「なぜそう決めたか」が伝わっています。
遺言あり/なしで、実家はこう違う
| 遺言がない | 遺言がある | |
|---|---|---|
| 実家を誰が継ぐか | 相続人全員の話し合いで決める | 親が決めた人が引き継ぐ |
| 決まるまでの間 | 全員の共有。売却も名義変更もできない | 遺言に従って手続きを進められる |
| きょうだいの負担 | 話し合いの日程、感情のもつれ | 「親の希望」があるので納得しやすい |
| 空き家になる期間 | 長引きやすい | 短くしやすい |
遺言は、実家の「その後」を早く動かす鍵です。
「誰も継がない」ときも、遺言は役に立つ
「子どもは全員、家を出た。誰も戻らない」という家もあります。この場合も、遺言で方針を残すことができます。たとえば「自宅は売却し、代金を3人で等分に。手続きは長男に任せる」のように書いておけば、残された子は迷いません。
なお、相続した土地を国に引き取ってもらう制度(相続土地国庫帰属制度)もありますが、建物が建っている土地はそのままでは対象になりません。実家をどうするかは、やはり親が元気なうちに決めておくのが近道です。法務省の案内
気をつけたいこと:特定の子に実家を残すとき
実家を一人の子に残すと、ほかの子の取り分が少なくなることがあります。ここで「遺留分」に気をつけます。遺留分とは、一定の相続人に法律で守られた最低限の取り分のことです。
遺留分を考えずに書くと、あとで取り分を求められ、かえってもめるおそれがあります。父の遺言のように、実家を継がない子に預金を多めに残すなど、全体で釣り合いをとる工夫があります。くわしくは「遺留分とは?」をご覧ください。
自分で書く遺言と公証役場で作る遺言の違いは「自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の違い」にまとめています。
親に、どう切り出す?
「実家をどうしたいか」は、親にとっても答えにくい問いです。いきなり「遺言を書いて」と言わず、家の話から入るのがコツです。切り出し方は「親に遺言を書いてほしい。どう切り出せばいい?」で、架空の家族の失敗と立て直しを紹介しています。
迷ったら、まずご相談を
この家族の話は架空のものですが、「名義が親のまま」「きょうだいで話がまとまらない」は、めずらしいことではありません。
社会福祉士・FP・行政書士成宮事務所は、滋賀県彦根市の行政書士事務所です。実家をどうするかを、遺言の作り方だけでなく、老後の暮らしやお金の見通しと一緒に整理します。登記は提携の司法書士と連携して進めます。
初回相談は無料で、時間の制限はありません。相談だけで終わってもかまいません。遺言づくりの流れと費用は「遺言書の作成」のページで紹介しています。
お電話は 090-9054-1513(電話の受付 9:00〜20:00)です。ご相談は予約制です。


