※登場するのは架空の人物で、実際の相談をもとにしたものではありません。
彦根の実家で、たんすの引き出しを片付けていた久美子さん(58)。奥から、のり付けされた茶封筒が出てきました。表には、亡くなった父の字で「遺言書」。
久美子「健二、これ……お父さんの遺言書やわ」
健二「えっ、ほんまに? 開けてみよ」
久美子「待って。勝手に開けたらあかんって聞いたことある」
健二「ほな、どうしたらええんよ」
親の遺言書を見つけて「開けていい? どこへ持っていく?」と迷っている方へ。この記事では、やってはいけないことと、次の一歩を順番にお伝えします。
遺言書の封筒は開けていい?
結論は「のり付けされた封筒は、自宅で開けない」です。封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人や代理人が立ち会って開封する決まりがあります(民法1004条3項)。
家庭裁判所の外で開けてしまった人には、5万円以下の過料という決まりもあります(民法1005条)。過料とは、行政上の罰金のようなものです。脅かす話ではなく、「そういう決まりがある」と知っておくだけで避けられます。
封がされていない遺言書なら、この開封の決まりはかかりません。ただし、次にお話しする「検認」が要るかどうかは、封の有無ではなく、遺言書の種類で決まります。
公正証書遺言か自筆か、見分け方
最初に見るのは「公証役場で作ったものか、ご本人が自分で書いたものか」です。ここで次の一歩が変わります。
公正証書遺言(公証役場で公証人が作った遺言書)には、公証役場の名前や公証人の名前が書かれています。役所の書類のような、整った見た目が目印です。
一方、便せんなどに手書きで書かれていれば、自筆の遺言書と考えてよいでしょう。
自筆の遺言書はどこへ持っていく?「検認」とは
自筆の遺言書は、家庭裁判所へ持っていきます。保管していた人や見つけた相続人は、相続の開始を知った後、遅滞なく(つまり、早めに)家庭裁判所に提出して「検認」を請求する決まりです(民法1004条1項)。
検認とは、家庭裁判所で遺言書の状態や内容を確かめて記録する手続きです。偽造や書き換えを防ぐためのもので、遺言が有効か無効かを決める場ではありません。「試験に合格するかどうか」ではないので、そこは安心してください。
検認を受けずに遺言の内容を実行した場合にも、過料の決まりがあります(民法1005条)。
検認が要らないのは、次の2つです。
- 公正証書遺言(民法1004条2項)
- 法務局で預かってもらう制度(自筆証書遺言書保管制度)を使った自筆の遺言書(遺言書保管法11条)
申立先は、亡くなった方の最後の住所地を受け持つ家庭裁判所です(家事事件手続法209条1項)。彦根市・犬上郡・愛荘町・東近江市・近江八幡市・蒲生郡なら大津家庭裁判所彦根支部、長浜市・米原市なら長浜支部です。くわしくは滋賀県の相続手続きの管轄一覧をご覧ください。
申立書は裁判所に出す書類なので、作成を頼むなら司法書士か弁護士です。
検認を待つ間にできること
検認の日を待つ間にも、進められることがあります。
- 遺言書はそのまま保管する。書き込まない、ホチキスを外さない
- ほかの相続人に「遺言書が見つかった」と知らせる
- 戸籍や財産の資料を集め始める
この3つを先にしておくと、検認のあとの手続きに移りやすくなります。
遺言執行者は書いてある?
内容を見られる段階になったら、「遺言執行者」が書かれているか確かめましょう。遺言執行者とは、遺言の内容を実際に実行する人のことです。公正証書遺言ならすぐに、封がされた自筆の遺言書なら検認で開封されたあとに確認できます。
書かれていれば、その人が中心になって手続きを進めます。書かれていなければ、家庭裁判所に選んでもらう方法があります(民法1010条)。
その夜、久美子さんは封筒をそのまま、仏壇の引き出しに大切にしまいました。
健二「開けへんで正解やったな」
久美子「うん。家庭裁判所って聞いて、ちょっと緊張したけど」
健二「二人で考えてても進まんし、いっぺん相談してみよか」
久美子「ほな、明日電話してみるわ」
社会福祉士・FP・行政書士成宮事務所(滋賀県彦根市)では、遺言書が見つかった段階からのご相談をお受けしています。行政書士として遺言執行者に就任することも、ご家族が執行者になる場合の実務のお手伝いもできます。検認の申立ては、提携の司法書士と連携して進めます。くわしくは「遺言執行のご相談」をご覧ください。お電話(090-9054-1513・9:00〜20:00)でも、メール・LINEでもご相談いただけます。初回のご相談は無料です。
※この記事の人物とお話は架空のものです。


