※登場するのは架空の人物で、実際の相談をもとにしたものではありません。
親が入院し、そのまま施設へ移ることになった。入院費の支払いや施設の契約は、子が勝手に代わることはできません。本人が判断できるうちは本人の手続きを手伝い、長くなるなら「財産管理委任契約」、判断する力が弱ったら「任意後見」へとつなぐのが基本の道筋です。
彦根でひとり暮らしをしていた正一さん(80代)が、自宅で転んで入院しました。退院後は、施設に入ることになりそうです。
大津に住む長女の恵子さんは、週末ごとに病院へ通っています。
「お父さんの入院費、年金の口座から払いたいんやけど、銀行で『ご本人の確認が要ります』って言われてしもて」
「施設の契約も、お父さんが書かなあかんのやろか」
恵子さんは、何から手をつければいいのか分からなくなりました。
本人が判断できるうちは、本人の手続きを手伝う
親が自分で判断できるなら、契約や手続きの主役は親自身です。子は、書類をそろえたり、窓口へ付き添ったりして手伝います。
入院費の支払いや、施設の契約書への署名も、本人ができるなら本人がします。体が不自由で窓口に行けないときは、本人が書いた委任状で、手続きを一つずつ頼む方法があります。
銀行の手続きは、銀行ごとに扱いが違います。キャッシュカードでの引き出しや、代理人の届け出については「親のキャッシュカードで家族が引き出してもいい?」で紹介しています。
入院や施設暮らしが長くなるなら「財産管理委任契約」
手続きのたびに委任状を書いてもらうのは、親にも子にも負担です。入院や施設暮らしが長くなりそうなら、財産管理委任契約を結んでおく方法があります。
財産管理委任契約は、判断する力があるうちから、お金の管理や手続きを信頼できる人に任せておく契約です。契約で決めておけば、次のようなことを任せられます。
- 預貯金の管理と、入院費・施設の費用・公共料金の支払い
- 介護サービスの利用契約や、施設に入るときの契約
- 入院の手続き、年金や保険の手続き
注意したいのは、銀行がこの契約をどこまで認めるかが、銀行ごとに違うことです。公正証書で契約しておくと、窓口で通りやすくなります。使う予定の銀行の扱いは、先に確かめておきましょう。
判断する力が弱ったら、委任契約だけでは足りない
財産管理委任契約は、本人に判断する力があることが前提です。認知症などで判断する力が弱ってきたら、そのまま続けるのは適切でないとされています。
また、委任契約には、家庭裁判所のような公的な監督の仕組みがありません。任された人が適切にお金を管理しているか、外から確かめる人がいないのです。
そこで使うのが任意後見契約です。判断する力が弱ったときに備え、誰に何を任せるかを、元気なうちに自分で決めておく契約です。
- 契約は、公証役場で公正証書にして結ぶ
- 判断する力が弱ってきたら、家庭裁判所に「任意後見監督人」を選んでもらう。そのときから効力が始まる
- 申し立てができるのは、本人・配偶者・4親等内の親族・任された人
監督人がつくので、任された家族も「きちんと管理している」と示しやすくなります。
2つをセットで結ぶ「移行型」
財産管理委任契約と任意後見契約は、ひと組で結んでおくのが一般的です。判断する力の変化に合わせて、切れ目なく引き継げるからです。
| 親の状態 | 使う仕組み |
|---|---|
| 元気だが、ひとり暮らしが心配 | 見守り契約 |
| 体が不自由で、銀行や役所に行けない | 財産管理委任契約 |
| 判断する力が弱ってきた | 任意後見契約(監督人が選ばれて開始) |
| 亡くなった後 | 死後事務委任契約・遺言 |
亡くなった後の手続きの分け方は「葬儀やお墓の希望を遺言に書いても、間に合わないことがある」で紹介しています。
準備がないまま判断する力が弱ったら
何も契約していないうちに判断する力が弱ると、家族が代わりに契約や支払いをすることは難しくなります。その場合は、家庭裁判所に申し立てて、法定後見の制度を使うことになります。
法定後見では、後見人を誰にするかを家庭裁判所が決めます。家族が選ばれるとは限りません。自分で任せる人を選べるのは、元気なうちに任意後見契約を結んでおいた場合です。
まとめ:入院をきっかけに、次の段階まで決めておく
親の入院は、お金の管理を見直すきっかけです。本人が判断できるうちに財産管理委任契約と任意後見契約をひと組で結んでおけば、施設に移った後も、判断する力が弱った後も、同じ人が支え続けられます。
正一さんは、入院中に恵子さんを任せる人とした財産管理委任契約と任意後見契約を、公正証書で結びました。公証人には病院へ来てもらいました。
「これで恵子に、いちいち病院まで書類を持ってきてもらわんですむな」と、正一さんはほっとした様子でした。
社会福祉士・FP・行政書士成宮事務所(滋賀県彦根市)では、財産管理委任契約や任意後見契約の設計から公正証書での作成まで、行政書士がお手伝いします。成年後見の仕事を続けている社会福祉士として、お金と暮らしの両方から組み立てます。任意後見については「任意後見契約」、財産管理については「財産管理委任契約」をご覧ください。お電話(090-9054-1513・9:00〜20:00)でも、メール・LINEでもご相談いただけます。初回のご相談は無料です。
※この記事の人物とお話は架空のものです。


