※登場するのは架空の人物で、実際の相談をもとにしたものではありません。
遺言を自分で書くとき、「相続させる」と「遺贈する」のどちらを使えばいいのか迷う方は多いです。基本は、相続人には「相続させる」、相続人でない人には「遺贈する」です。相続人でない人に渡すときは、手続きと税金が重くなる点を知っておきましょう。
彦根に住む幸子さん(70代)は、本を見ながら遺言の下書きをしていました。自宅は長男に、預金の一部は孫の拓也さんに渡すつもりです。
「この本、『相続させる』って書いてある例と、『遺贈する』って書いてある例があるんよ」
様子を見に来た長男がのぞき込みます。
「どっちでも同じとちゃうの?」
「それが分からんから困ってるんやないの」
結論:相続人には「相続させる」、相続人でない人には「遺贈する」
相続人とは、配偶者や子など、法律で財産を受け継ぐと決まっている人です。相続人に渡すなら「相続させる」と書くのが基本です。
子が健在のときの孫、子の配偶者、おい・めい、友人などは相続人ではありません。この人たちに渡すときは「遺贈する」と書きます。相続人でない人に「相続させる」と書いても、相続させることはできません。
誰にどちらを使うかは、次の表が目安です。
| 受け取る人 | 遺言に書く言葉 |
|---|---|
| 配偶者 | 相続させる |
| 子 | 相続させる |
| 孫(子が先に亡くなり、代わりに相続人になる場合) | 相続させる |
| 孫(子が健在の場合) | 遺贈する |
| 子の配偶者(息子の妻など) | 遺贈する |
| 友人・お世話になった人・団体 | 遺贈する |
兄弟姉妹やおい・めいは、相続人になる場合とならない場合があります。子や親がいるかどうかで変わるので、書く前に確かめましょう。
幸子さんの場合、長男には「自宅を相続させる」、拓也さんには「預金のうち○○円を遺贈する」と書くことになります。
相続人に渡すなら、手続きの差は小さくなった
相続人に渡す場合は、「相続させる」と書いても「遺贈する」と書いても、税金や登記の差はほとんどありません。
- 登録免許税(不動産の名義を変えるときの税金):どちらも不動産の価額の0.4%
- 不動産取得税:どちらもかからない
- 登記の申請:どちらも、受け取る人が一人で申請できる
それでも「相続させる」を使うのが一般的です。遺言執行者(ゆいごんしっこうしゃ)を決めておけば、名義の変更や預金の解約を執行者が進められると、民法にはっきり書かれているからです。
相続人でない人に「遺贈する」と、手続きと税金が重くなる
相続人でない人に遺贈すると、次のように変わります。
- 登録免許税:不動産の価額の2%(相続人なら0.4%)
- 不動産取得税:特定の不動産を遺贈すると、かかることがある
- 登記の申請:受け取る人だけでは申請できず、相続人全員か、遺言執行者と一緒に申請する
とくに最後の点は大切です。孫が祖母の家を遺贈で受け取る場合、叔父や叔母にあたる相続人全員の協力が要ることになります。遺言執行者を決めておけば、執行者と一緒に手続きできます。くわしくは「遺言執行」のページをご覧ください。
相続税が2割増しになる「2割加算」については、「孫や息子の妻に遺言で遺すと、相続税は2割増し?」で紹介しています。
「財産の3分の1を遺贈する」は、借金も引き継ぐ書き方
遺贈には2つの書き方があります。
- 特定遺贈:「○○銀行の預金を」「この土地を」と、財産を指定して渡す
- 包括遺贈:「財産の3分の1を」と、割合で渡す
割合で渡す包括遺贈を受けた人は、法律上、相続人と同じ立場になります。借金があれば、その割合で引き継ぐことになり、遺産の分け方の話し合いにも加わります。
孫や友人に「少し渡したい」だけなら、特定遺贈で財産を指定するほうが、受け取る人の負担は軽くなります。特定遺贈は、受け取る人が要らなければ、いつでも断ることができます。
書くときは、財産を特定し「もしも」を添える
言葉を選んだら、次の3つも確かめておきましょう。
- 財産を特定する:不動産は登記の記録どおりに、預金は銀行名・支店名・口座の種類まで書く
- 受け取る人が先に亡くなったとき:その部分は効力がなくなります。代わりの行き先も書いておくと安心です(夫婦の遺言の記事で文例を紹介しています)
- 遺言執行者を決める:とくに相続人でない人に遺贈するときは、手続きが進めやすくなります
まとめ:迷ったら、書いた遺言を見てもらう
相続人には「相続させる」、相続人でない人には「遺贈する」。相続人でない人に渡すときは、登記や税金の負担が重くなるので、遺言執行者もあわせて決めておきましょう。
幸子さんは、書き上げた下書きを専門家に見てもらいました。拓也さんへの預金は口座まで特定し、遺言執行者に長男を書き入れました。
「言葉ひとつで、こんなに違うんやねえ」と、幸子さんは感心していました。
社会福祉士・FP・行政書士成宮事務所(滋賀県彦根市)では、遺言の原案作成のほか、ご自身で書かれた遺言のチェックもお受けしています。公正証書遺言の準備や遺言執行も、行政書士がお手伝いします。くわしくは「遺言書の作成」をご覧ください。お電話(090-9054-1513・9:00〜20:00)でも、メール・LINEでもご相談いただけます。初回のご相談は無料です。
※この記事の人物とお話は架空のものです。


